技術書典5に、このすみ堂という個人サークルで参加してきました。前回に引き続き、2回目の参加です。
今回は、二冊の新刊を書き上げてイベントに臨みました。
- 新刊1 エンジニアアンチパターン 〜失敗に学ぶエンジニアリング〜
- 新刊2 PHP中級者を目指す 〜言語を使いこなすための本〜
二冊に相関は特になく、全くジャンルが異なる本です。特に、PHP中級者を目指すは執筆がとても大変でした。全17章構成もあることに加えて、中途半端に間違った知識は書けません。8月と9月の週末は、ほぼ執筆に捧げる結果となってしまいました。
でも、必死に書き上げた努力は報われました。合計で300冊(150冊 + 150冊)が頒布され、新刊は両方とも完売しました。さらにTwitterで、読者の方から感謝の言葉までいただくことが出来ました。
今回の技術書典5は、私にとって忘れられない思い出になりそうです。ゆっくりと振り返ってみたいと思います!
エンジニアアンチパターン
「エンジニアアンチパターン」は、自らの失敗について書いた本です。
ベストセラーである「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」を読んだ際に、「自分の失敗には共有する価値がありそうだ」という事実に気づきました。
とある購入者の方が、本書を「エンジニア版のしくじり先生みたいな本ですね」と例えておりましたが、まさにその通りの本です。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
- 購入: 55人 クリック: 1,360回
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第1章と最終章は、特に気合いを入れて書きました。
第1章 プログラミング: パフォーマンスが悪いプログラム
第1章は、新卒時代に最初に配属された現場での失敗談です。そのため、特に鮮明に覚えています。
初めて業務で作ったプログラムは、アンチパターンの塊でした。
- メモリオーバー
- メモリリーク
- 低パフォーマンス
ただ、商品データの出力バッチというプログラムは、今思えば最初に経験できて良かったと思います。数百万点の商品を出力するわけですから、パフォーマンスを意識せざるを得ません。
第8章 スキルアップ: 生存戦略に振り回された学習
第8章は、生存戦略のための学習について書きました。「きっと何者になるための失敗談」というコンセプトだけを先に決めて、後はひたすら執筆しました。
ちなみに、何故印象に残っているのかと申しますと、第8章の執筆中は「【輪るピングドラム】 生存戦略まとめ」を常に無限ループで再生していたからです(苦笑)。
生存戦略を意識して、何者になろうとして失敗した話です。無限ループの再生は、初心に立ち返るという意味では効果があった・・・かもしれません。
PHP中級者を目指す
「PHP中級者を目指す」は、PHPの入門書を読み終えた方のステップアップを想定して書きました。
PHPの本は、入門書やフレームワークに関する本が多いです。良書として「パーフェクトPHP」があるものの、PHP5系です。そこで、PHP7にも対応した言語そのものの本があれば、需要があるのではないかと考えました。
なお、本書を書こうと思った一番の動機は、自分自身がそういう本が欲しかったからです。
中途半端に間違ったことは書けない
PHPの本は、自分の知識をベースに書きました。しかしながら、中途半端に間違ったことは書けません。
そこで、主要参考文献として「WEB+DB PRESS総集編」をひたすら読み込みました。
WEB+DB PRESS総集編[Vol.1~102] (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- 作者: 川合史朗,秋葉拓哉,中嶋謙互,木村廉,酒井政裕,ninjinkun,渡辺訓章,WEB+DB PRESS編集部
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/04/26
- メディア: 単行本
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なぜ「WEB+DB PRESS」かと申しますと、一線級のエンジニアが執筆した、実践的なPHPスキルがたくさん掲載されているからです。さらに、雑誌は時流に沿った内容なので、新しいPHPについて書かれています。
それに、雑誌の連載や特集は、紙面の制約でコンパクトにまとめられています。知識が凝縮されているので、エッセンスがとても役立ちました。
特に、Pixiv社の「PHP大規模開発入門」はオススメです。これだけでも、総集編を買う価値はあると思います。
正直なところ、本書の執筆はとても時間がかかりました。本文に加えて、サンプルコードも書く必要があったのです。挫折しそうになったときは、ビールを飲んでテンションを上げつつ、どうにか書き上げることができました。
完成できて本当に良かったです。
サークルとしての参加結果
被チェック数は251でした
このすみ堂の最終的な被チェック数は、251でした。被チェック数とは、要約するとサークルのブックマーク数です。
前回の技術書典4では、id:at_grandpaさんとの合同サークルで124でした。単純計算すると、倍増になります。
ただ、前回は合同サークルでしたので、実質は4倍近いチェック数をいただくことが出来たと思ってます。チェックしていただいた皆様、ありがとうございます。
頒布した本は約300冊で、全て完売しました
今回は、新刊二冊(150部 + 150部)をねこのしっぽさんで印刷しました。
前回の技術書典4では「Firebase Realtime Database と React.js で始めるリアルタイム アプリケーション入門」を、アクセアさんで80部印刷しています。
つまり、前回の技術書典4と比べると、印刷部数は約4倍になります。かなりの強気で臨んだつもりでした。
エンジニアアンチパターンの完売
「エンジニアアンチパターン」は、なんと12時台で完売してしまいました。自らの失敗談を書くという、とても変わり種の本です。
それが1分に1冊以上のペースで頒布されていくなんて、想像もしませんでした。
これはあくまで予想ですが、エンジニアアンチパターンは、読者層の間口が広い本です。そのため、多くの方に手に取っていただけたのではないかと推測しています。
PHP中級者を目指すは15時過ぎに完売する
「PHP中級者を目指す」は、15時台に完売しました。こちらは、特定の時間に偏るというよりは、コンスタントに頒布されていきました。
見本誌がとても人気で、長時間読んでくださる方も多数いらっしゃいました。ページ数が表紙込みで142ページに加え、全17章構成あります。そのため、目次を見てからパラパラとめくり、購入を決める方が多かったです。
今回取り組んだこと
包み隠さず、自らの黒歴史を披露した
「エンジニアアンチパターン」に収録した失敗談は、全て私の実話です。過度な脚色はせずに、地に足のついた本を目指しました。
技術選定はミスりましたし、工数見積もりは炎上しました。リファクタリングで始末書も書きました。わりと散々なエンジニア人生です(苦笑)。
逆に言えば、ノンフィクションだったからこそリアルな内容が書けた・・・と言えるかもしれません。
YYPHPで需要を確認した
「PHP中級者を目指す」は、いざ書き始めてみたものの、世の中に受け入れられる本かどうかは半信半疑の状態でした。
そこで、YYPHPに参加して意見を聞いてみることにしました。
本の簡単なプレゼンをした後に、実際に感想を聞いてみました。なんと、「マンガでわかるDocker2」の監修でもお馴染みのれおりんさんから「この本は需要がある!」という感想をいただくことが出来ました。
おかげで安心して書くことができましたし、無事に頒布することが出来てよかったです。
イラストレーターさんに表紙を発注した
前回の技術書典4では、フリーイラストの画像を使いました。しかし、今回はイラストレーターさんに発注してみることにしました。
エンジニアアンチパターン
表紙イラストはぞえさんが書きました。最初のオーダーは「督促OL業務日誌のような表紙でお願いします!」で発注しています。
- 作者: 榎本まみ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2013/09/13
- メディア: 単行本
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理由は単純で「督促OL業務日誌」が大好きだったからです(笑)。あと、督促OL業務日誌は、借金の督促という辛い環境のコールセンターでの話です。本書と内容に親和性がありました。
PHP中級者を目指す
表紙イラストは藤依ひなさんが書きました。「技術を学ぶことに対するワクワク感をイメージ」して発注しています。
そして、藤依さんにはポストカードも依頼してみました。そう、今回は購入者特典のポストカードにもこだわったのです!
池袋のサンシャインまで来ていただいて、このすみ堂の本を購入していただいたのです。「ありがとう」と言う以外にも、何か感謝の意を表明したいと考えました。
表紙にエンボス加工を入れてみた
今回は、新刊二冊とも表紙にエンボス加工を入れてみることにしました。ステンドグラスのような模様が特徴で、ねこスパークのオプションにあります。
少し汚れが付きやすいという欠点こそあるものの、とても綺麗です。本書の頒布数に影響があったのかどうかは分かりませんが、私はとても気に入っています。
ポスターを使ってサークルをレイアウトしてみた
今回は、ねこのしっぽで購入したポスタースタンドを始め、高さを少し活用したサークルレイアウトしてみました。ポスターの印刷はB4です。
サークル参加の反響
rehash.fmのスマイルさんが来てくれた
rehash.fmのスマイルさんが、このすみ堂に立ち寄ってくださいました。
このすみさんにご挨拶できたのよかった
— スマイル (@smile_0yen) October 8, 2018
来ていただいた時間帯は、既に本が完売していたので申し訳なかったのですが、とてもテンションが上がりました!
write-blog-every-weekのよしたくさんが来てくれた
私も最近ジョインした「write-blog-every-week」のSlackから、よしたくさんが立ち寄ってくださいました。
これまた「エンジニアアンチパターン」は完売で、とても申し訳なかったのですが、同じくテンションが上がりました。
よしたくさんのブログはこちらです。
YYPHPの皆様が来てくれた
YYPHPの主催であるれおりんさんやぬーぺっとさんを始め、何名かのYYPHP勢の方にもお越しいただきました。
「YYPHPで見てきましたー」という方にもお声がけいただいて、とても嬉しかったです。
他のサークル主さんが遊びにきてくれた
みじんこ組さんを始め、いくつかのサークル主さんも立ち寄ってくださいました。
それに、アフターパーティーでも色々なサークル主さんと会話することが出来ました。
さいごに
今回の技術書典5は、他のサークルさんの本を買う余裕こそなかったものの、とても楽しく過ごすことが出来ました。
ただ、実は色々と失敗もしています。特に印刷関連は苦労しました。その辺りは「技術系同人誌の出稿アンチパターン 失敗に学ぶ同人誌印刷」にまとめています。
次回の技術書典6では、このブログがはじめて脚光を浴びるきっかけになった、プログラミング言語Kuinについて書いてみたいと思ってます。
ただ、私のKuin力はとても低い状態です。次回の申込み期日までに、Kuinで何か作れればきっと書ける・・・はず。
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