このすみノート

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若手開発者を育成するための、リメイクという選択肢・日本ファルコム - ゲームの企画書3

『ゲームの企画書3』を読みました。

すべての章が面白かったですが、『ワニワニパニック』『パワプロ』『みんゴル』など誰もが知っているゲームが並ぶなか、私が特に興味を抱いたのは日本ファルコム(イース、英雄伝説など)です。

なぜリメイク作品を開発するのか?

日本ファルコムでは、メインプログラマーの離脱により開発力が低下した時期がありました。 その時期に彼らが選択した手法が、リメイクです。

ひとつは、ウチは『歴史が長い』ということもあってか、新作よりもリメイクを作ったほうが堅く売れるんです。手間についても、完全新作を作るより5分の1で済みます。 だから、どうしても利益を上げるためには、そういう判断もするわけです。
もうひとつは、新作を作るには"いろいろな技術も才能も必要になる"こと。いまいる人を育てようと思ったときに、リメイクなら彼らでも作りやすい。 おまけに、リメイクを作る過程で、ゲームの構造を理解できるメリットもある。
ゲームの企画書3 より

この中で興味深いのは、若手開発者を育成するためにリメイクという手法を選択している点です。

スキルアップとしてのリメイク開発

リメイクには必ずオリジナルとなるゲームがあり、それは過去に在籍していた社員や、先輩社員が開発した作品です。 それをブラッシュアップするのがリメイクなわけですが、少し考えただけでも、いくつものメリットが思い浮かびます。

  • オリジナル作品の内部実装に触れることで、ゲーム開発の理解を深める
  • オリジナル作品をブラッシュアップする過程で、自然に技術力が向上する
  • 完全新作よりも工数が大幅に抑えられるため、育成に時間をかけやすい
  • ...etc

私とリファクタリング

思えば私も、自分の技術力が向上したとはっきり感じたのは、既存プログラムをリファクタリングしているときでした。 リファクタリングはエンジニア用語ですが、度重なる仕様変更で複雑になってしまったプログラムを整理したり、内部実装を改善することで、修正および拡張しやすいプログラムに直す作業のことを言います。

新規開発が一段落して暇になったからという理由もありますが、私は一時的ずっとリファクタリングしてました。 リファクタリングをしていた当時は、いろいろと見えてくるものがありました。

  • 10人以上のプログラマが携わってきたシステムだったので、端々に垣間見える各プログラムの個性から、プログラミングテクニックを盗めた
  • 冗長なプログラムをシンプルなプログラムへ改善する過程で、スパゲッティコードを回避する技術力が身についた
  • 奥深くにあるマニアックな仕様まで理解できたので、運用保守に対する不安が減った
  • ...etc

さいごに

リメイクゲームの開発を、若手開発者の育成という視点で捉えたことはなかったので、目からウロコでした。

『ゲームの企画書』はシリーズを通して面白いですが、1冊目のコーエーのエピソードはとくに良かったので、これも次の機会で感想を書きたいと思います。