技術書典7にサークル参加しました。 場所は3階の「う17C」で、サークル名は「このすみ堂」です。
本記事ではサークル参加した感想と、技術書典7に向けたサークル活動のふりかえりを書いていきます。
技術書典7で頒布した新刊
技術書典7では、2冊の新刊を頒布しました。
- Node.js中級者を目指す
- エンジニアアンチパターンNEXT
なお今回の新刊は、どちらも既刊を大幅に加筆修正した本です。
Node.js中級者を目指す
「Node.js中級者を目指す」は、技術書同人誌博覧会(技書博)の「Node.js学習日記」を加筆修正した本です。 技書博のNode.js本は94ページでしたが、技術書典7に向けて加筆し、170ページになりました。
なお加筆内容は、「TypeScriptを使った開発」「コーディングガイドラインとESLint」「Node.jsとセキュリティ」などです。
Node.js本のコンセプト
「Node.js中級者を目指す」は、書名にある通り、入門書より上のレイヤーのNode.js本を目指して書きました。 本書のコンセプトは、「本書を読むことによって、Node.jsに詳しくなれる(理解度が向上する)」です。
なお、Node.jsの中級者本を書こうと思った理由は、主に次の2点です。
- Node.jsの本は古い書籍が多く、最近のNode.jsを解説した本が少なかった(実際に書店のJSコーナーに行き、確認しました)
- オライリーの「Node.jsデザインパターン 第2版」がおもしろすぎたので、自分もこんな本が書いてみたかった
- 作者: Mario Casciaro,Luciano Mammino,武舎広幸,阿部和也
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2019/05/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「Node.jsデザインパターン」に強くインスパイアされている本なので、実は内容が似通ってしまうのではないかと、危惧していました。 ただし実際にネタ出しをし、本書を書きはじめてみたところ、結果的に違う切り口で書くことができました。
あくまで自分自身がNode.jsで覚えたことや、実践投入時に得た知見をベースにして執筆したことが、本書の色を出す結果につながったと感じております。
エンジニアアンチパターンNEXT
「エンジニアアンチパターンNEXT」は、技術書典5の「エンジニアアンチパターン」を加筆修正した本です。 技術書典5のアンチパターン本は60ページでしたが、技術書典7に向けて加筆し、100ページになりました。
なお加筆内容は、「エラー状況が把握できないエラーログ」「スクラムの奴隷で信頼を失うプロジェクトリーダー」「放置されるOJT」「スペシャリストを目指して挫折する物語」などです。
アンチパターン本のコンセプト
「エンジニアアンチパターンNEXT」は、自分自身のITエンジニアとしての失敗を共有することを目的に書きました。 本書のコンセプトは、「失敗や黒歴史から学びを得ることで、同じ轍を踏むエンジニアを減らしたい」です。
アンチパターン本を書こうと思った理由は、主に次の2点です。
- 自分の失敗は自分にしか書けないため、書けばオンリーワンの本になると思った
- 「失敗の本質(中公文庫)」を読んでいるときに、失敗には価値がある(学びがある)ことに気づいたから
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
- 購入: 55人 クリック: 1,360回
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「エンジニアアンチパターンNEXT」に書いてある内容は、リファクタリングに失敗して数百万円の損害を出した話や、スペシャリストを志そうとして道半ばで挫折した話などです。
気分が落ち込む内容の失敗もあったので、ビールという名のアルコールの力がなければ、この本は途中で執筆を挫折していたかもしれません(苦笑い)。
新刊2冊の執筆は楽ではなかった
今回の新刊は2冊とも底本があったとは言え、「Node.js中級者を目指す」は76ページ、「エンジニアアンチパターンNEXT」は40ページ増えました。 加筆スケジュールは時間も厳しく、かなり苦労しました。
- 7/27:技術書同人誌博覧会が終了
- 8/1:技術書典7に向けて、Node.js中級者を目指すの執筆を開始
- 9/4:Node.js中級者を目指すの加筆を終え、推敲と校正を開始
- 9/7:Node.js中級者を目指すの入稿
- 9/8:エンジニアアンチパターンNEXTの執筆を開始
- 9/16:エンジニアアンチパターンNEXTの加筆を終え、推敲と校正を開始
- 9/17:エンジニアアンチパターンNEXTの入稿
新刊2冊とも、加筆を終えたのが「ねこのしっぽ」の入稿〆切が間近のタイミングでした。 そのため推敲と校正の時間が満足に取れず、結局入稿前は徹夜することになりました。
有給も使って執筆を終わらせる
とくに苦労したのがアンチパターン本です。 ページ数が116ページを超え、印刷〆切が早くなることを覚悟していたNode.js本の執筆を先行させたので、実質的な執筆期間が1週間しか残されていませんでした。
最終的には有給休暇も使って、無理やり終わらせましたが。 わずか1週間での執筆は大変すぎるので、オススメしません。
ちなみにアンチパターン本は付録が2章あるのですが、「付録A:ご注文はオフショアですか?」と「付録B:やはり俺のSEO対策は間違っている。」は、入稿ギリギリに勢いで追加した章です。
イベント当日に向けた準備
売り子の協力依頼
まずはじめに、高校時代の同級生を売り子のお手伝いとして誘いました。 彼は組み込み系でジャンルこそ違いますが、同じエンジニアだったこともあり、興味を持ってくれ手伝ってもらえることになりました。
備品の購入
サークル設営に必要な備品は、「【改訂版】はじめてのサークル参加に必要なもの【hondel】」を参考に、ホームセンターで購入しました。 あの布も同じくホームセンターで、布の切れ端を買って代用しました。
ただし技術書典4でサークル参加したときに、ひととおりの備品は購入していました。 今回新たに購入したのは、付箋くらいです。
電子版の準備
電子版は対面電書を使いました。 対面電書の印刷サポート機能で生成したシリアルコード付きのDLカード(PNG画像)を、用紙1枚あたり16ページ(DLカード16枚)の設定で、普通にプリンターを使って印刷しました。
ちなみにやり方ですが、単純にMacのFinder上で画像を複数選択してプレビューで開き、プレビューの印刷機能で印刷するだけです。
反省点としては、印刷するときのコピー用紙は厚紙にしておけば良かったです。 普通のコピー紙に印刷してしまったので、とても薄っぺらいDLカードになってしまいました。
あと、用紙1枚あたり16ページ(DLカード16枚)はやりすぎました。 DLカードがとても小さくなってしまったので、多くても9枚くらいにしておけば良かったです。
サークルの広報
本の宣伝は、ブログとTwitterで行ないました。 執筆が忙しかったこともあり、特別な宣伝は一切できなかったですが。 基本に忠実に広報したのは、それなりに効果があったと推測されます。
被チェック数の推移
今回の技術書典7は、スタートダッシュの公開数日間の被チェック数の伸びが、想像以上に良かったです。 その後の被チェック数は、想定ほど加速して増えることはなかったですが。
サークルの被チェック数は、最終的に379となりました。 チェックしてくれた皆さま、誠にありがとうございました。
新刊の需要予測
「このすみ堂」の新刊は2冊だったため、印刷部数の配分を決めるためには、被チェック数の内訳を知る必要がありました。 これには、Twitterのアンケートを利用しました。
技術書典7のサークルページにアンケートへのリンクを掲載していたのですが、20票ほど投票していただき、新刊の印刷部数を決めるのに参考になりました。
技術書典7で「う17C」のこのすみ堂をサークルチェックされた方向けのアンケートです。
— このすみ (@konosumi) August 29, 2019
「Node.js中級者を目指す」と「エンジニアアンチパターンNext」の、どちらが気になっていますか?
(回答結果は印刷部数の参考材料として利用いたします)#技術書典
イベント当日のふりかえり
サークルの準備が慌ただしかった
9時40分頃に会場に到着したのですが、待ち時間が長く最終的にサークル入場できた頃には、時計が10時20分を過ぎていました。
とくに3階は階段、またはエレベーターでの移動が必要だったこともあり、慌ただしいサークル設営となりました。
準備時間の不足は技術書典7のアンケートにも多く寄せられていると思いますので、次回の改善を期待したいです。
本の頒布傾向(時間帯編)
かんたん後払いの売上データがダウンロードできるようになっていたので、集計してみました。
- 11時: 43冊
- 12時: 57冊
- 13時: 34冊
- 14時: 22冊
- 15時: 11冊
- 16時: 18冊
- 17時: 2冊
- 総合計:187冊
今までの技術書典と同じく、やはり早い時間帯の頒布が多い傾向にありました。
本の頒布傾向(書籍別編)
- (新刊1)Node.js中級者を目指す: 100冊
- (新刊2)エンジニアアンチパターンNEXT: 76冊
- (既刊1)レベルアップPHP 言語を理解して中級者へ: 7冊
- (既刊2)Kuinプログラミング入門: 4冊
Twitterの事前アンケートほど顕著な差はなかったのですが、Node.js本が想定通り、一番多く頒布される結果となりました。
なおここに書いてある冊数は、かんたん後払いでの頒布冊数です。 弊サークルにおける決済割合は、かんたん後払いが45%、現金が55%でした。 今回は後払いの利用率がとても高くて、びっくりしました。
現金決済も含めた頒布冊数は400冊を超えているので、被チェック数よりは多く頒布することができました。
じっくり立ち読みする方が多い
今回の技術書典7では、じっくり立ち読みする方が多い傾向にありました。 14時以降は頒布冊数が減少していますが、立ち読みする方も多かったので、後半の時間帯のほうが忙しかったです。
3階は人の余裕があったので、立ち読みし易かったことが理由のひとつかもしれません。
今まで技術書典4・5・6とサークル参加してきましたが、今回は来場者の購入判断が、以前より慎重だったと感じています。 これはあくまで推測ですが、「サークル数が増えたことによって、チェックしたサークルの本をすべて買うのは、金銭的にも物量的にも難しくなった」と、予想してます。
電子版の頒布を開始する
BOOTHの電子版は、技術書典7の開場に先立ち、頒布を開始することにしました。 当日の朝は慌ただしいので、前日の夜、寝る前(9/22の0時)に準備をして公開してました。
ただし電子版が頒布され始めたのはイベント後(主に翌日)だったので、あまり影響はなかったかもしれません。
在庫はとらのあなとBOOTHとへ
Node.js本の余った在庫は、とらのあなとBOOTHへ預けることにしました。 とらのあな様が商品の代行登録をしてくださったため、委託がとても簡単で驚きました。
非公式アフター
当日の最後は、非公式アフターに参加しました。 おやかたさん、いつもありがとうございます。
techbook-and-ethanol.connpass.com
さいごに
技術書典7では、既刊を大幅に見直して加筆修正した結果、納得のいく本を頒布することができました。 頒布数も今まで(技術書典4〜7)のサークル活動の中では、もっとも良かったです。
ただし印刷部数が多すぎて、150冊を超える在庫が余る結果となりました。 今回は被チェック数の伸びも不安定だったので、あくまで被チェック数は参考程度にとどめ、次回以降は物理本の印刷部数を絞ろうかなと考えております。
技術書の執筆による成長
今回は何よりも、Node.js本の執筆を通じて、Node.jsに詳しくなれたのが良かったです。 「Node.js中級者を目指す」の執筆は、学びだらけでした。
自分が武器としたい技術があるのであれば、その技術をテーマにした技術系同人誌の執筆はオススメかもしれません。