「セイチョウ・ジャーニー」「挫折論への招待」アドベントカレンダー Advent Calendar 2019の19日目の記事です。
「挫折論への招待」は、技術書典6でGrowthfactionが頒布した、挫折をテーマとした同人誌です。 私は本書に、スペシャリストを目指したけど挫折したという内容で、キャリアに関する挫折を寄稿しました。
本記事に書くのは、スペシャリストを目指して挫折したあとの、その後の物語です。
挫折してから立ち直るまで
詳細は割愛しますが、キャリアにおいて「スペシャリスト」か「マネージャー」を選択する局面になり、私はスペシャリストを選択しました。 スペシャリストを選択した主な理由は、コミュニケーションが得意でなくマネージャーは不向きである点と、プログラミングが好きでIT業界に入ったからです。
スペシャリストを目指して挫折する
スペシャリストを目指すと宣言したまでは良かったものの、そもそもスペシャリストという言葉は曖昧です。 情報処理試験を例に挙げるとわかりやすいかもしれませんが、ネットワークスペシャリストもあれば、データベーススペシャリストもあります。
当時の私は一介のWEBエンジニアだったので、なにかに秀でているという感覚はありませんでした。 ここで「明確な目標も決めぬまま、闇雲に技術力を上げてとにかくスペシャリストを目指す」という発想に陥ってしまったことが、挫折へのきっかけでした。
- 闇雲に勉強した結果、何エンジニアを⽬指しているのか分からなくなってしまった
- 勉強会で強いITエンジニアと出会うたびに、自分の技術力のなさを痛感して焦ってしまう
- 焦燥感に駆られた、終わりなき受験勉強のような感覚に陥ってしまい、モチベーションが尽きてしまった
ごちうさに癒やされてから、もしドラで復活するまで
スペシャリストを目指して挫折した後は、モチベーションが尽きていました。 休日も気分が晴れなかったので、「ご注文はうさぎですか?」という平和な日常系アニメを見て、心を癒やす日々が続きました。
しばらくは挫折を引きずっていたのですが、復活したのは本屋で購入した、もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』)を読んだことがきっかけです。
流行っていたからという単純な理由で手にとったのですが、あまりに内容がおもしろくて驚きました。 一度は捨てたマネージメントという選択肢だけど、チャレンジしてみようと思い、挫折から立ち直ります。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (新潮文庫)
- 作者:岩崎 夏海
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/11/28
- メディア: 文庫
マネージメントと技術の両天秤
マネージメントが楽しいことに気づいた私ですが、若⼿や後輩が何⼈か⼊社したことも相まって、少しずつ彼らをリードするプロジェクト管理や、リーダー業務に時間を割くことも増えていきました。
正直なところマネージメントも苦労の連続で、ここでも挫折感を味わったり、失敗を経験することになります。 それはまた別の話なのですが、「技術一本で食べていく!」という気負いが抜けた結果、心に余裕が生まれました。
その結果、IT系の勉強会も純粋に楽しめるようになったり、技術書も焦らずじっくり読めるようになりました。
テック系ポッドキャストで知る技術の魅力
ここで私に転機を与えてくれたのは、テック系ポッドキャストの存在です。 Rebuild.fmを聴き始めたのが、最初のきっかけでした。
その後いくつかのテック系ポッドキャストを聴いて私が感じたことは、エンジニア同⼠のテックトークはこんなにも興味深く、⼈を惹きつけるのかということです。
スペシャリストの道から⼀度は挫折した私ですが、再び技術の楽しさを気づかせてくれたのが、テック系ポッドキャストでした。
スラムダンクの桜木花道に学ぶひたむきさ
スラムダンクの劇場版には、武園高校の小田が湘北高校「桜木花道」のひたむきなプレイに感化され、本来の自分を取り戻すという物語があります。
武園高校の小田は、勝つことへの執着心が強くなりすぎたあまり、トゲトゲしい日々を過ごしていました。 しかし桜木花道との対戦をきっかけに、笑顔が絶えずバスケを楽しんでいた、中学生の頃の自分を思い出します。
楽しんでいれば、技術力は後から自然と付いてくる
私の場合も、武園高校の小田と同じです。 キャリアを焦るあまり、気負ってしまったことが挫折への入り口でした。
私は大学で情報系の学部を卒業しているのですが、当時プログラミングは好きだと感じたことが、そもそものIT業界に入るきっかけでした。 つまり、当時の感覚のまま技術を技術として楽しんでいれば、技術力なんて後から自然と付いてくるくらいの感覚のほうが、幸せであると言えるかもしれません。
初心に帰って技術を楽しむ
私は趣味で2年前から技術同人活動をやっているのですが、その理由のひとつに、初心に帰って技術を楽しみたいからという理由があります。
その結果として執筆したのが、技術書典5の「PHP中級者を目指す(商業誌版:レベルアップPHP)」や、技術書典7の「Node.js中級者を目指す」という同人誌です。 ちなみに2冊とも中級者レベルの内容で、書くのはわりと苦労しました(主に〆切が)。
これは技術同人に限らず仕事も含めてですが。 焦って闇雲に技術力の向上を目指していたときよりも、素直に技術を楽しんでいる今のほうが、技術力向上につながっているという実感があります。
余談:マネージャーとスペシャリストは二者択一なのか
これは余談ですが、「スペシャリスト」か「マネージャー」を選択するということを、最初に書いてます。 しかしながら、マネージメントやリーダーシップを技術と捉えるならば、マネージャーは「マネージメントのスペシャリスト」です。
ちなみにカックさんの「プロジェクトをリードする技術」という記事は、たまに読み返してますがオススメです。
またテックリードのようなテクニカル寄りのリーダーシップを発揮するポジションもあるため、今思えば二者択一で片方を切り捨てるという発想自体が、私の場合は視野が狭く袋小路の入り口だったのかもしれません。
さいごに
何かに悩んだときは、初心に帰ることをオススメします。 キャリアを焦ってしまうと、私のように挫折を味わうことになるかもしれませんので、お気をつけください。
それでも駄目な時は、「ごちうさ」か「スラムダンク」がオススメです。
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