以前KPC(コンビニコミック)と呼ばれる講談社のレーベルで、頭文字Dが発売していました。 隔週の発売で毎号読んでいたのですが、これがまたおもしろいです。
ふと疑問に思ったのですが、頭文字Dにおける主人公の藤原拓海の成長には、興味深い点がたくさんあります。 少し考察してみようと思い、記事にしてみることにしました。
高橋涼介の「リーダーとしてのあり方講座」
藤原拓海の成長を支える主な存在は、父である藤原文太と、赤城レッドサンズおよびプロジェクトDのリーダーである高橋涼介です。
高橋涼介の「リーダーとしてのあり方講座」というページがあります。 とても興味深い内容で、ここで主要なリーダーシップ論を学ぶことができます。
- 相手に考えさせることで成長させる
- 指示は明確に
- すべてを見通したうえでの発言
- 重要なことは重要であると念押しする
- 相手を信頼する
- メンバーを鼓舞する
- 指示は明確に (2)
- 必要に応じて、手持ちのデータと経験で即断する
- 相手のレベルに合わせる
- リスクを認識する
- 敵を知り己を知る
- よくやったときは心から褒める
本記事には見出しだけ引用しましたが、詳細はぜひとも記事を読んでいただければと!
藤原拓海の成長論
水をこぼしてはならない制約の上での成長
藤原拓海は早朝に毎日、秋名山を往復して豆腐の配達を行ないます。 ここで文太は拓海に「水をこぼしてはならない」という制約を加えます。
水をこぼしてはならないという制約が加わることで、繊細なハンドルさばきが要求されます。 しかも水の量は日に日に増えていき、難易度が上がっていくのです。
あえて「水をこぼしてはならない」という制約を加えることで、藤原拓海は加速度的なテクニックの向上を成し遂げたのです。 制約があることによって、そのルール内でどう戦うのかを考え、工夫する力が身につきます。
ライバル(高橋啓介)としのぎを削ることによる成長
藤原拓海のライバルといえば、拓海が最初に戦うこととなる赤城レッドサンズの高橋啓介です。 のちに同じチームとしてともに戦うことになりますが、重要なのは高橋啓介と藤原拓海がともに公道最速を目指して戦っていることです。
成長を成し遂げるためには、実力の近しいライバルを身の回りに置くことが重要であるとわかります。 なぜ近い実力であることが重要かと言いますと、あまりに遠すぎる存在では身近な目標にならないからです。
羽生結弦さんよりもフィギュアスケートが下手で落ち込む人はほとんどいないでしょうが、同期の出世に敏感な人はたくさんいます。 ポケットモンスターでもライバルの存在は描かれますが、切磋琢磨できる身近なライバルの存在は重要なのです。
秋名山から飛び出し殻を破るという決断
拓海が成長することを決定づけたのは、秋名山から飛び出したことにあると言えます。 秋名山に留まらず、大海へと繰り出したのです。
「井の中の蛙大海を知らず」ということわざにあるように、外へ飛び出せば猛者がたくさんいます。 猛者としのぎを削って揉まれることにより、拓海の成長は加速しました。
・・・ではなぜ拓海が秋名山を飛び出す決意を固めたといえば、やはり高橋啓介と高橋涼介の存在が大きいです。 本気で公道レースをやっている人たちを目の当たりにすることで、拓海はその世界に飛び込むことを決意したと言えます。
私がITエンジニアなのでエンジニア風に言うならば、ミートアップやカンファレンスに参加することでモチベーションの高いエンジニアと触れ合い、それに刺激され加速度的にモチベーションが向上した状態と言えるかもしれません。
あえてFRから4WDのインプレッサに乗り換える
ハチロクを乗りこなす藤原拓海ですが、途中から文太が中古で購入したインプレッサを使い始めます。 文太の指示により豆腐の配達は、ハチロクとインプレッサを交互(1日おき)に使うことになりました。
文太の狙いはあえてインプレッサを使うことで、ハチロクという車を客観的に評価させることにあります。 普段自分が乗っている車の特性や弱点が、あえて他の車に乗せることで比較対象となり見えてきます。
またこの頃の拓海の敵は、4WDも増えてきました。 敵が使っている車にあえて自分から乗ることで、4WDの弱点を探そうというわけです。
他の峠では同じ戦いを繰り返さない
秋名山では側溝を使い、いろは坂では落葉に助けられ、箱根では濃い霧(これは啓介)を活用します。 これは言ってしまえばその場に最適化した戦い方であり、ステージ毎に合わせた戦略を考えるからこそできる裏技です。
同じ戦い方は繰り返さないからこそ、毎回戦略を考え、それによってアドリブや思考力が磨かれます。 逆に言ってしまえば、いつまで経っても同じ戦い方を繰り返していると成長はないとも言えます。
あえてタコメーターのパワーを封印する
故障したハチロクに文太は高回転型エンジンを搭載します。 しかしここからが、拓海の苦労の始まりでした。 せっかく高回転のエンジンを搭載したと言うのに、「むしろパワーが出ていないような気がする」と漏らすほどだったのです。
原因は高回転型エンジンを活用できるセッティングに、ハチロクがなっていなかったことです。 この一件により拓海は、車のチューニングやセッティングがいかに重要であるかを理解することになります。
知識とテクニックが融合することで、拓海はますます強くなります。 この成長は文太が、あえてハチロクを完璧な状態まで仕上げなかったことによって成し遂げられました。
自分ですべてをやらずに、相手が創意工夫し考える余地を残すことが重要であるとわかります。
精神的な支えの大切さ
前半では同じ高校の茂木なつきが、後半ではプロゴルファーを目指している上原美佳が拓海の精神的な支えになります。 レースの最中は車の中に一人であり孤独なので、心の支えは重要です。
それはハチロク対決の乾信司が、佐藤真子や母親のことを思い浮かべながら試合中に戦っていたことからもわかります。
さいごに
頭文字Dはただの公道レース漫画ではありません。 成長と発見にあふれています。
普段の読書も考察しながら読むと、また違った楽しみ方が生まれてきます。 頭文字Dおもしろいですよっ!
この内容でどこかでLTやりたいです。
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