数学で戦争を止めようとした男の物語 - アルキメデスの大戦【映画感想】

映画館で2019年7月26日に公開されたアルキメデスの大戦を鑑賞しました。 先に結論を言ってしまうと、おもしろい映画で観て良かったです。

archimedes-movie.jp

最近は映画感想を書いてなかったのですが、久々に書きます。 なおネタバレが含まれておりますので、あらかじめご了承ください。

映画概要編

『アルキメデスの大戦』予告映像

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史実をもとにしたフィクション

本映画は歴史を書き換える物語ではないため、沖縄に戦艦大和が海上特攻し、最終的に沈没してしまう昭和20年の坊ノ岬沖海戦が起こる事実は変わりません。

そして本映画の舞台は、昭和20年の海戦から遡ること10年以上も前からはじまります。 この時代からすでに、戦争の推進をめぐる駆け引きが行われていたというのです。

数学の力で戦争を止める

戦艦大和は大艦巨砲主義の最たるものであり、日本国の象徴と呼べるほど巨大な戦艦です。 戦艦大和が誕生してしまえば、それに鼓舞された国であり国民は、戦争への自信を深め開戦への道を歩んでしまいます。

最初は「軍人が嫌い」という理由で断っていた主人公の櫂直(菅田将暉)は、山本五十六(舘ひろし)の説得もあり、海軍に入ることを決意します。 櫂直は100年に一人と言われるほどの数学の天才で、数学の力で戦艦大和の建造に立ち向かいます。

新艦の建造を決定する会議までに、数学の力で戦艦大和の莫大な建造費を算出する。 不正を立証し、正しい意思決定をするための戦いを描く物語です。

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映画感想編

数字は嘘をつかない

アルキメデスの大戦では主人公の「数字は嘘をつかない」というセリフが、何回も登場しました。 この信念を終始曲げない主人公に、私はすごく共感します。

本映画は戦艦大和の建造費が不当に少ない理由を追求していく過程がメインにこそなっていますが、「日本は日露戦争に勝てるほど強い国だから、列強を相手にしても戦える」という驕りに対して、デジタルに立ち向かっていく物語であるようにも思えます。

猪瀬直樹さんの昭和16年夏の敗戦でも、開戦を想定したシミュレーションで「日本は米英に対して緒戦、奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となり敗戦に至る」という結果が出ています。

昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

数字は嘘をつかないは、何も戦争に限った話ではありません。 今でこそビジネスの世界は数字がモノを言うは自然に受け入れられていますが、感情に流された意思決定はとても危険です。

大艦巨砲主義 VS 航空主兵主義

山本五十六ら航空主兵派が推し進めていたのは、空母の建造です。 実際に大艦巨砲主義は古いという感覚は、真珠湾攻撃における空母と航空機の活躍から証明されています。

ただこの点において、主人公の櫂直は航空主兵派にうまく利用されていたとも言えます。 戦艦大和の建造を阻止しても空母は建造されるわけですから、根本的な戦争の回避へと進むわけではありません。

そういう意味で最後の造船中将「平山忠道」による大ドンデン返しは、衝撃的でした。 「戦艦大和が巨大戦艦であり、日本の象徴だからこそ意味がある」ある意味で、本映画の主役は造船中将「平山忠道」だったとも私は考えています。

相関関係による戦艦建造費の算出

時間のない中で櫂直が導き出した数式は、とある相関関係によって戦艦の建造費を導き出すというものでした。 私はエンジニアとして働いてますが、今ITエンジニアの業界ではビックデータをはじめとする膨大なデータから、法則を導き出す解析手法が主流です。

本映画が描いている数式による戦艦の建造費の算出は、まさに時代を先取りした構図です。 それを自分の頭で導き出してしまうところが、櫂直のすごいところです。

ただ本映画は、間違った数値による意思決定の危険性も併せて描いていると私は考えました。 数学には戦争を止める力もあれば、戦争をはじめる力もあるのです。

さいごに

「数学の力で戦争を止める」本映画は派手な戦闘シーンこそないものの、とてもおもしろい映画だと私は感じました。

私は理系出身ですが、同じく理系出身だとより楽しめるかと思います。

「数学の力を体感せよ!」