続・未踏ジュニアのスーパークリエイタという世界 - 2018年度未踏ジュニアの感動を語り隊

「未踏ジュニア」というプロジェクトがあります。 独創的なアイデア、卓越した技術を持つ17歳以下の小中高生および高専生を対象とした、ミニ未踏です。

jr.mitou.org

優れた能力を持つ若い人材を発掘・育成することを目的としているプロジェクトですが、これが本当にすごいのです。 私が「未踏ジュニア」をはじめて知ったときは、純粋に驚きました。

「技術」「アイデア」「プレゼン能力」が、未踏ジュニアでは要求されます。 現在は2019年度のプロジェクトが進んでいる段階ですが、今回は前年度(2018年度)の未踏ジュニアを見ていきます。

2018年度の未踏ジュニアの結果

以下が最終結果です。 12件14人が採択され、さらにその中から未踏ジュニアスーパークリエータが6人誕生しました。

  • (☆は未踏ジュニアスーパークリエータ)
  • ☆三橋優希 UTIPS - 家事の情報共有サービス
  • ☆平野正太郎 Let'sえいごパズル!- 変化するキューブで楽しく学ぶ英単語
  • 佐藤怜 スマイル会議室 - IoTで会議室の効率的な利用を
  • ☆末神奏宙 Vreath - 暗号通貨の入手障壁を下げるための、独自合意アルゴリズムの開発
  • 柴原佳範 Corkboard - 位置的に管理するメモサービス
  • 末田貴一/高見優/佐藤美咲 TouchBuy - VRにおけるECの在り方の模索
  • 齋藤尊 強化学習を用いたロボットサッカーシミュレーション
  • ☆藤本結衣 メモリーカプセル - カプセルを通して繋がるSNS
  • ☆浪川洪作 Sound in the forest - 複数のスマートフォンによる「動く音」の表現
  • ☆西村惟 Toubans!- LINEで設定・通知できる当番お知らせサービス
  • 河原慶太郎 写して翻訳
  • 武藤熙麟 Life Watcher - 急変する持病を持つ人のための警報システム
  • (引用: https://resemom.jp/article/2018/10/24/47352.html)

全部を書くと大変なので、今回は未踏ジュニアスーパークリエータに限定して書きます。

三橋優希さん UTIPS - 家事の情報共有サービス

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中学3年生の三橋優希さんが開発したのは、家事のやり方や工夫を共有するサービスです。

  • 家事の情報は、閉じたコミュティでしか共有されていない
  • 自分に合った家事のやり方に、なかなかインターネット検索ではたどり着けない
  • インターネットの記事で掲載されるような手のこんだ家事より、日常の家事を知りたい

普段の日常の家事のノウハウを、気軽に共有することを目的としています。

ユーザーテストによる改善と機能追加

  • お題に沿って投稿する機能によって、話題が分散しないようにする
  • 「洗濯」「時短術」などのタグ機能によって、知りたい情報だけをフィルタリングできるようにする

ユーザーテストを実施することで、上記のような機能を追加しながらブラッシュアップを繰り返しました。

  • Google Analyticsを導入して、ユーザーの動きや動向を調査
  • 23人を対象にしてユーザーテストを実施したが、辛口意見も多かった
  • 想定外の記事ばかり投稿されるから、お題機能を追加してみた

学んだこと

  • Ruby on Rails
  • プロジェクトの作り方や進め方
    • 目的をちゃんと決めよう、など。
  • プレゼンの仕方や方法
  • 人の意見に応えすぎてはいけない
    • 自分が作ろうとしていた目的から外れてしまう可能性もある

Ruby on Railsを選んだ理由は「Rubyは名前が可愛いから好き」「RubyKaigiが楽しそうだった」「Rails Girlsに参加したから」・・・など。 好きだからという単純明快な理由が、素直であり素敵でした。

平野正太郎さん Let'sえいごパズル!- 変化するキューブで楽しく学ぶ英単語

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12歳で中学1年生の平野正太郎さんが開発したのは、小さな子供が楽しく英単語を覚える「Let'sえいごパズル!」です。

エンジニア心をくするぐるようなプレゼンで技術面でも感動したので、平野さんのプレゼンはぜひ見てください。

システムおよび通信構成

  • ブラウザ(ゲーム画面):enchant.js
  • サーバー:node.js
  • パズル台、キューブ:Arduino
  • (通信)ブラウザとサーバー間:Socket.io
  • (通信)サーバーとパズル台:Node-serialport
  • (通信)パズル台とキューブ:赤外線通信

技術的な工夫など

  • 転送サイズを節約するために、ランレングス法で文字を圧縮
  • Arduino互換機、Universalnoの活用
  • 文字をasciiコードに変換し、asciiコードの通りにLEDを光らせる
  • 赤外線の誤受信を改善するために、赤外線について勉強した
    • 赤外線は同期をとることが重要
    • なぜ、テレビのリモコンは誤受信をしないのか?
    • PWMの設定レジスタについて、1行ずつ調べて解決

反省点など

  • 電気系統の基礎知識が足りておらず、苦労した
  • カッコよさそうだから赤外線を選んだけど、赤外線通信は難しい
  • はんだ付けが下手

末神奏宙さん Vreath - 暗号通貨の入手障壁を下げるための、独自合意アルゴリズムの開発

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ブロックチェーンに詳しい高校生の、末神奏宙さんの発表です。 こんなプレゼンがしてみたいと思えるくらいには必見です。 発表は上手いし内容もすごいし、純粋に驚きました。

Vreathは新しい暗号通貨のひとつです。 スマホで数分待つだけで入手でき、全世界のスマホユーザーがVreathユーザーになれるシステムで、暗号通貨は買うまでが大変という常識を覆しています。

ブロックチェーンに詳しくない人であっても、発表がとにかくわかりやすいので理解が進みます。 宝くじで例えてみたりと、例の使い方が工夫されています。

マイニングの報酬を分配すれば良いのでは?

今までのブロックチェーンは計算の早さを競う体力勝負の側面があり、そして勝者が総取りでした。 「これを分配すれば良いのでは?」という疑問から、プロジェクトは進みます。

  • Parallel Mining
    • ユーザーは、やさしい計算問題を解くだけで良い
    • スマホをつけて、待っている間に暗号通貨を取得できる
  • Parallel verification
    • 嘘をつくと損をする仕組み

このあたりは少し高度な話なので、実際のプレゼンを視聴されることをオススメします。 ブログの文章だと、簡潔に書くのが難しいです。

とにかく「ブロックチェーンを普及させたい!」という欲求がすごくて、感動しました。 今後の課題は、VM(仮想マシン)やスケーラビリティなどインフラ面の対策とのことです。

藤本結衣さん メモリーカプセル - カプセルを通して繋がるSNS

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SNSによって出来事や写真が共有され、地理的に遠い場所も身近に感じられるようになりました。 「その反面、近くの場所が昔より遠くなってしまったのでは?」という疑問から、寄り道が楽しくなるSNSを考案したのが藤本結衣さんです。

タイムカプセルを埋めて掘り出す

  • 発信側:文章を書き、写真を選びます。そしてカプセルを埋めます。
  • 見る側:カプセルを探し、見つけたカプセルを掘ります。そして中身を読みます。
    • カプセルは20m以内でないと掘り出せないので、投稿した場所でしか投稿内容が見れません

発信側には「タイムカプセルを埋めるときのようなワクワク感」を、見る側には「カプセルを探索するドキドキ感」を与えます。

知らない人とつながるよりは、リアルの知り合いや近所の人との交流に重きがおかれたSNSです。

システム構成

  • フロント:iOSアプリ
  • ストレージ:Cloud Firestore (Firebase)

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浪川洪作さん Sound in the forest - 複数のスマートフォンによる「動く音」の表現

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高校3年生の浪川洪作さんは、武道館で観客のスマホをコントロールし、遠隔にスピーカーから音を鳴らすようなシステムを考案しました。

最終的には「数千台〜数万台のスマートフォンスピーカーを分散制御」することを目標に、未踏ジュニアでは数台〜数十台の実機で基盤となる技術の検証や実験を行ないました。 そして位置情報を加工することで、スマホの場所によって発信する音が変わるようなシステムです。

苦労したこと

  • 音を揃えるためには時刻同期が必要
    • 単純なメッセージのブロードキャストでは、ネットワーク遅延で音の鳴るタイミングがずれてしまう
    • デバイスの時刻はずれている
    • そこで、Webサーバー上にNTPを実装して導入した
  • スマホ1台ごとに音源を生成するのは負荷が高い
    • 同じメッセージを送って、スマホ側が解釈して音を発信する仕組みとした

実現できたこと

  • 簡単な時刻同期
  • 位置情報による音響合成
  • 複数台による実験

今後の課題

  • デバイスを増やす
  • 時刻同期の精度向上
  • スピーカーの個体差を減らす

5Gの普及などは、インフラ面や通信遅延の解消に役立ちそうです。

西村惟さん Toubans!- LINEで設定・通知できる当番お知らせサービス

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高校2年生の西村惟さんは、LINEを使って掃除当番の管理や、当番を忘れてしまうといった問題を解決しました。 サービスとしてリリースされており、学校の掃除当番以外にも汎用的に使えるサービスになっています。

最初に開発したのは掃除当番Bot

当初は単純に学校の掃除当番の問題を解決するために、プログラミングでbotを開発しました。 その結果、一時期あだ名が「掃除bot」になったそうです。

他にもいろいろな場所、たとえば「ゴミ当番でも使えるかも?」といった着想から、汎用化に着手します。

  • 誰でも設定ができるサービス
  • LINEだけで、通知・設定が完結
  • プログラミングが不要

システム構成

  • LIFF
    • LINEの新しい機能
    • LINE内で動作するウェブアプリプラットフォーム
  • サーバー:heroku

技術面の話

  • WEB系の知識(サーバーなど)を身に付けた
  • PHPはプロジェクトがはじまってから覚えた
  • LIFFはまだまだ新しいから、未知の体験が多かった
  • Messaging APIは意外と高い

試作など

  • 試作1:当番の形態に合わせた、3つの設定画面
  • 試作2:シンプルなフォームのまま、複数ある当番にも対応
  • ユーザーテストは71名:中学生〜70代まで
    • 手順がわかりづらい、設定項目が多いなどのフィードバックがあた

最終的に3分で当番を設定できるサービスとして、「Toubans!」は正式リリースされています。

www.toubans.com

今後やりたいこと

  • スマートスピーカーとの連携
    • 今日の当番をLINE Clovaで聞ける
  • LINE以外への通知

さいごに

すべてのプレゼンがおもしろかったので、ぜひブログよりも実際に動画を見て欲しいです。 技術面以外に、アイデアの着想過程やプレゼンの参考にもなります。

末神奏宙さんと西村惟さんは、とくにプレゼンの流れが良かったので、私もこういう名プレゼンができるようになりたいなぁ。

平野正太郎さんの「Let'sえいごパズル!」は、ソフトウェアもハードウェアも両方使ってエンジニア心をくすぐる内容になってるので眠気が飛びます!

おまけ: 未踏ジュニアのスーパークリエイタという世界

以前の記事です。

www.konosumi.net