外資系企業の秘書として就職を目指す、一人の女性の物語 - 外資のオキテ

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泉ハナさんの「外資のオキテ」を読みました。

物語として面白かったので、一気読みしてしまいました。外資系企業にまつわるエピソードですが、理想と現実のギャップに苦戦する主人公の貴美子に対して、中盤移行はずっと感情移入しながら読んでいました。

本記事には、ネタバレ感想がありますのでご注意ください。

外資のオキテ (角川文庫)

外資のオキテ (角川文庫)

1年の語学留学は留学ではない

本書を読んで最初に心が打ち砕かれるのは、「外資系企業で留学と言った場合、少なくとも、大学、もしくは大学院で単位を取得した、あるいは卒業したことを指します。」のくだりです。語学留学をアピールすることは、外資系企業への就職にはマイナスにしかならない!・・・これは中々に衝撃でした。

言われてみれば確かに納得で「英語が話せる = 仕事がデキる」というわけではありません。

私のようなITエンジニアであれば、プログラムを書いたりサーバーを立てることが出来る能力の方が大事ですし、英語は得意でなかったとしても、意外とどうにか英語の資料も読めるものです。

本書の主人公である貴美子は、バックオフィスである秘書を目指しています。秘書であれば、例えば交渉力であったり、資料の作成能力や、相手から情報を引き出す力が求められます。「英語をアピールする = 他にアピールする材料がない」ともとれるわけで、その辺りのギャップが、最初に貴美子と読者に突きつけられます。

トランスパイルの水野さん

最初の派遣先の上司がトランスパイルの水野さんだったことは、間違いなく貴美子にとって幸運でした。撤退が決まっている寂しい職場ではありましたが、私も水野さんのようになりたいと思えるくらい、水野さんはしっかりした人でした。

私はエンジニアをやってるからよく分かるんですけど、普段はプログラムやサーバーと向き合っているので、人とのコミュニケーションっておざなりになりがちなんです。その点、水野さんは指示も的確だし、相手への敬意も忘れません。

日本で働いているとは言え外資系企業なので、「オフィスがクローズするから退職(レイオフ)になる〜」のくだりを、さらっと言ってのけるのはやはり外資ならではかもしれません。

モンゴメリー生命の小田さん

モンゴメリー生命の小田さんもまた、間違いなくデキる人です。金井さんのもとで働き続けるのは現実的ではないでしょうから、「実績を積んで、評判を高めてのヘッドハンティング」は当然だと感じます。

ただ、もし金井さんが取り乱さない現実的な上司だったら、小田さんはヘッドハンティングを受けたのだろうか?・・・が、少し気になりました。

モンゴメリー生命では、外資で働く人達の打算的であったり、ドライな側面が見える一方で、プライベートを趣味で満喫するような楽しみ方も描かれています。

外資系企業における働き方の根底には「仕事における人の繋がりは、仕事を円滑にこなすために築くものである」という考え方が根付いているような気がします。そのため、プライベートで深い付き合いをしたり、給湯室で長話なんてことはありません。

でも、それには欠点があります。「仕事における繋がりは、一度仕事のバランスが乱れると崩れやすい」のです。この欠点が見事に露呈したのが、モンゴメリー生命だと感じました。深く立ち入らない浅い関係だと、貴美子のように相談できる人を失って追い込まれてしまうこともあるかもしれません。

シュットラーのリーリー

「シュットラー」のような会社は、是非とも働いてみたいです!

特に、KinKi Kidsの堂本光一さんのために日本語を覚えたリーリーは、凄い登場人物です。ここまで一途で素直な人は、世の中になかなか居ないと思います。

無口なマイクも最後はカッコいい側面を見せるし、シュットラーで働いている方々は、良い意味の個性が強いです。

高村さん、がんばったと思うよ。みんな、何も言わないけれど、ちゃんとわかってる。結果はあとから必ず君に返ってくるよ

この言葉が後になって効いてくるとは、思いもしませんでした。

結局、日本の企業だろうが外資系企業だろうが、仕事をしっかりとこなす人を求めているのです。必要な努力は、外資だろうと日本の企業だろうと変わりません。

自慢と自信の違い

本書の貴美子は、少し繊細な側面がありつつも、とても真摯で真面目なキャラクターです。留学経験や、英語が話せる自分に天狗になって打ちのめされる局面もありますが、私も同じ立場だったら浮かれてしまう自信があります(苦笑)。

本書では、自慢と自信の違いが話題になっています。自慢というのは、どこか鼻につく側面があります。本書を読んで感じたことは、自慢とは「人と違うことをした」であったり、「珍しいことをした」など、ただ単に行為を自慢しているから腑に落ちないのではないかと感じました。

一方で自信というのは「会議のために精一杯こだわった資料だから、自信があります」であったり、成果や経験に対してフォーカスがあたります。着々と経験や実績を積み重ねていった結果、それこそが自信になるのです。

さいごに

貴美子は、よく「すみません」と言ってしまい、もっと自信を持ちなよと周りから言われてます。でも、夢への一歩を踏み出した貴美子は、最後には良い感じに開き直っています。

貴美子の今後が気になりつつも、自分も自信を持って胸張って仕事しないとなぁ・・・と思える、日曜の昼下がりでした。

外資のオキテ (角川文庫)

外資のオキテ (角川文庫)