太平洋戦争(大東亜戦争)の歴史を日米双方の視点で俯瞰する「太平洋戦争(中公文庫)」

児島襄さんの「太平洋戦争」を読みました。

太平洋戦争 (上) (中公文庫)

太平洋戦争 (上) (中公文庫)

太平洋戦争 (下) (中公文庫)

太平洋戦争 (下) (中公文庫)

私が太平洋戦争(大東亜戦争)の歴史に興味を持ったきっかけは「この世界の片隅に」なんですが、本書は日米双方の視点から太平洋戦争が描かれており、冷静に太平洋戦争の歴史を俯瞰して見ることができる本です。

毎日の通勤時間を使いながら少しずつ読み続け、ようやく読み終えたので感想を書いていきたいと思います。

目次

まえがき

5年間を費やして完成した書

本書は、軍事知識を持たない著者が、5年にも渡る丹念な調査によって執筆した本です。

  • 技術的知識の修得
  • 日米両国での資料収集
  • 中部太平洋、東南アジア、ニューギニア、ガダルカナルまで戦跡の現場検証

防衛庁戦史室、米海兵隊戦史室、米議会図書館、オーストラリア戦争記念館、国際文化会館図書室、米大使館図書室・・・を始め、多くの協力によって本書は完成しました。

特に、多くの海外文献を参考にして書かれているため、アメリカ側の視点で太平洋戦争を見れる点が、通常の日本視点で描かれた歴史書との違いではないかと思います。

昭和十六年秋、参謀本部

石油が足りない

昭和十六年の日本は、物資不足に陥っていました。南部仏印の協定が発表されるやいなや、米、英、オランダ政府は、経済圧迫に打って出たのです。

日本の在外資産は凍結され、石油の供給はストップしました。資源を海外に頼る日本にとっては致命的な痛手です。

「沈思苦慮の日続く、一日の待機は一滴の油を消費す。一日の待機は一滴の血を多からしむ」

開戦を決意するか外交に委ねるか

日米交渉に希望を持っている海軍に対して、陸軍は交渉は米国の「術策」だと断じています。この陸軍の予想は正しく、ハル国務長官は以下のように述べています。

「私は、最初から平和的解決に到達するチャンスは二十分の一あるいは五十分の一、百分の一もないと予想していた」

米国側は、軍備を整える時間を稼ぐために、外交の引き伸ばし作戦を展開していたのです。

長期戦の見通しに不安を持つ海軍

一見すると、米国が外交の引き伸ばしを行なうのであれば、石油が不足する前の早期開戦という決断が正しかったようにも思えます。

しかし、海軍が開戦に慎重だった理由は「日本海軍としては開戦ニカ年の間の必勝の確信を有する」が、米英の本土を攻略する力はない。三年目以降は「遺憾ながら予見し得ず」という、長期戦への不安にあります。

しかしながら、迷っている間にも国内の資源備蓄は減少していきます。日本が戦争をやりたい一番の理由は、南方資源の獲得にあったのです。

最初の一発を日本に打たせろ

米国は「ハル・ノート」による最後通牒によって、開戦を予期していました。ハル長官は、スチムソン陸軍長官に対してこう語っています。

「私は手を洗った。あとは君とノックス - 陸軍と海軍の問題だ」

さらに「最初の一発を日本に打たせろ」この方針は、米国民の支持を得るために必要なことだと、閣議で確認されていたのです。

真珠湾空襲

米国史上空前の被害

ハワイ空襲の手順は、あらかじめ精密に規定されており、攻撃は正確に予定表どおりに行われました。ここに、日本軍パイロットの技術力の高さを垣間見ることができます。

  • 撃沈
    • 戦艦:オクラホマ、アリゾナ、カリフォルニア、ウエスト・バージニア、ネバダ
    • 軽巡:ローリ
    • 機雷敷設艦:オグララ
    • 標的艦:ユタ
  • 大破
    • 軽巡:ヘレナ
    • 駆逐艦:ショー
    • 工作艦:ベスタル
  • 中破
    • 戦艦:テネシー、メリーランド
    • 水上機母艦:カーチス
  • 小破
    • 戦艦:ペンシルバニア
    • 重巡:ニュー・オルリンズ
    • 軽巡:ホノルル
    • 水雷母艦:リーゲル

さらに、人員被害にいたっては、わずか二時間の戦闘で2000人以上の死者を数えました。短時間の戦闘でのこれだけの被害は、米軍にとってこの真珠湾だけだったのです。

真珠湾空襲、演習にあらず

ハワイのホノルル市内は、混乱に陥っていました。流言、さらには同士討ちの被害まで発生し、ホノルル市民は眠れない夜を過ごしました。

なんと、空母「エンタープライズ」からとびたったグラマン戦闘機を、日本機だと誤認し、射撃、同士討ちによる損害まで発生してしまったのです。

真珠湾攻撃の評価

本書内には、真珠湾攻撃において反復攻撃を行わなかった経緯が書かれています。

読んでみると、敵に致命的打撃を与えたとして、これ以上の攻撃で味方の損害を増やしたくない機動部隊の思惑と、完膚なきまでに壊滅させるという山本大将の考えに、微妙なズレがあることが見て取れます。

しかし、真珠湾攻撃によって、米国の本格的な進行作戦の開始を遅らせることに成功したことは事実であり、まずは上々の首尾であったと、本書では述べられています。

真珠湾、その後

全部書こうと思ったのですが、あまりに長いため、開戦まで書いた段階で力尽きました。ここから先は、本書は以下のように進みます。

  • 上巻
    • マレー沖海戦
    • フィリピン進攻、ウェーキ島攻略
    • 香港、シンガポール攻略
    • 蘭印、バターン半島攻略戦
    • 東京空襲とミッドウェー開戦
    • ガダルカナル島の死闘
  • 下巻
    • 昭和十八年 - 戦争の転機
    • 中部太平洋の戦い
    • 悲劇のインパール作戦
    • サイパン島室陥
    • フィリピンに決戦をもとめて
    • 比島沖海戦
    • 最後の戦闘

南方資源の獲得

開戦当初の日本の進攻は凄まじく、南方資源の獲得に成功します。中でも英国(イギリス)の最新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」を撃沈させたことは有名で、これは戦艦から空母と戦闘機の時代に移り変わったという事実も示しています。

ミッドウェー海戦

ミッドウェー海戦では、日本の暗号電文は解読されてしまっていたものの、当時の連合国側の太平洋戦線の船舶事情は思わしくなく、数の上ではまともにやりあえば日本が勝利をおさめていた可能性があります。

ガダルカナル島の死闘

ガダルカナル島の死闘は、読み進める度に悲しくなってくるほど、飢え・マラリア・補給が途絶えたことによる糧食の不足、銃火器の不足による劣勢での戦いが描かれています。

日本軍の戦闘の見通しの甘さに加えて、米国の太平洋作戦への本気度を垣間見ることができます。

インパール作戦

インパール作戦の惨状は、色々なところで語られているため、あえて語るまでもないのですが、撤退の決定の遅れによって、多くの将兵が命を落とす結果となりました。

その被害は、なんとガダルカナル島の死闘の4倍にも達するといわれています。多くの将兵を失った日本軍は、苦境な持久戦へと追い込まれています。

劣勢な日本軍と慎重な連合国

その後は、サイパン、フィリピン、沖縄と陥落していき、本土決戦の思想へと本書は進んでいきます。

本書下巻では、マリアナの七面鳥撃ちに代表されるように、明らかに兵器の質・量ともに差が出てしまっており、劣勢な状況での日本軍が描かれています。

しかしながら、一方で連合国側の日本の実力を過小評価しないという、慎重な考えも同時に描かれています。独自でも戦争を終結させることは出来るが、被害を拡大したくない米国は、ソ連に参戦を打診するという行動に出ています。

さいごに

この記事だけでは到底すべてを語り尽くすことはできませんので、ぜひとも本書を手に取ってみてください。

センセーショナルに戦争や歴史を語る書籍が多い中、本書は日米双方の目線から、とても冷静に書かれています。

太平洋戦争 (上) (中公文庫)

太平洋戦争 (上) (中公文庫)

太平洋戦争 (下) (中公文庫)

太平洋戦争 (下) (中公文庫)