近藤奈々さんと父、水樹奈々さんと三嶋章夫さん、そして深愛に込められた深い愛

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「深愛」という本があります。幻冬舎文庫から刊行されている、歌手・声優である水樹奈々さんの自伝です。

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)

私は、過去に一度読んだことがあるのですが、最近になってまた再読しました。改めて読み直してみましたが、やはり深い本です。中学に行って、高校に行って、勉強して、大学に行って・・・そんな普通な人生ではないのです。

普通でない人生には、やはり紆余曲折があります。

今の水樹奈々さんだけを見れば、声優としても大活躍していて、歌手としても紅白歌合戦に出場したりと、光り輝く面ばかりが目立ちますが、そこに至るまでの苦労が本書には書かれています。

ネタバレありの感想を書いていきますので、その点だけ予めご容赦ください。

目次

解説編

ひたすら演歌を練習する幼少時代

子供の頃の近藤奈々さんは、父とひたすら演歌の練習に明け暮れていました。

平日は自宅で練習して、週末はイベントに参加して歌います。歯科技工士である父親の職場は、機会の音がこだまする職場です。音にも粉塵にも負けずに、必死に歌い続けなければなりません。

演歌を歌う子供というのは、現代では相当に珍しいのではないかと思います。週末のイベントでは大人気だった水樹奈々さんでしたが、周りの子供と遊ぶ時間すら取れません。

さらには、普通でないという事がきっかけで、学校ではいじめの対象にまで選ばれてしまいます。近藤奈々さんの幼少時代は、決して明るいものではありませんでしたが、着実に演歌の実力は蓄えていきました。

皆勤賞の高校時代

中学を卒業した近藤奈々さんは、東京の堀越高等学校に入学します。演歌歌手を目指しての上京、学科は芸能科です。

全国せとうちカラオケ選手権大会で見事に一位を獲得し、とある芸能事務所から認められた奈々さんは、東京のボイストレーナーの先生の元へと下宿をします。

近藤奈々さんは、堀越高等学校では皆勤賞や成績上位を獲得するなど、真面目な高校生活を送りました。しかしながら、それは芸能科に通うとっては、仕事がないという不名誉の証しでもあります。

さらには、近藤奈々さんに対してボイストレーナーの先生のセクハラが襲いかかります。はっきりしたセクハラではありませんでしたが、それは思春期の女子高生を傷つけるには十分でした。

高校に通いながら声優の専門学校に通う

同じ事務所に所属していた声優さんから勧められ、奈々さんは声優の専門学校に通い始めます。なんと、事務所のお墨付きで、授業料もゼロ円です。

もともとアニメやゲームが大好きだった近藤さんにとって、声優という職業はとても興味がある分野です。

この後の近藤さんは、主に声優としてのキャリアを歩み始めることにななります。演歌歌手を目指すと家族や高校に宣言して、深夜バスに乗り上京したのですが、なんとも不思議な巡り合わせです。

NOëL 〜La neige〜の門倉千沙都でデビュー

「NOëL 〜La neige〜」のオーディションに合格した近藤奈々さんは、門倉千沙都役でデビューを果たします。

芸名も、響きの良さから水樹奈々に決めて、準備は万端です。しかしながら、そう単純には行きませんでした。声優に必要なのは、声を出す技術だけではありません。他にも覚えることがたくさんあります。

新人声優である水樹奈々さんは、苦労の連続の末、なんとか無事にデビューを果たすことができたのです。

NOeL La neige 門倉千紗都ミニアルバムdepart Chisato×Nana

NOeL La neige 門倉千紗都ミニアルバムdepart Chisato×Nana

三嶋プロデューサーとの出会い

キングレコードのプロデューサーである三嶋章夫さんとの出会いは、水樹奈々さんのファーストライブがきっかけでした。

この後、三嶋さんの支えによって、水樹奈々さんは人気への階段を駆け上ることになります。しかしながら、レコード会社のプロデューサーが、デビュー間もない新人声優に目をつけるのは、とても異例な出来事です。

「あれだけ歌えて、あれだけ喉が成熟している歌手なのに、80年代のアイドル以上に不可侵的な処女性があるんです。しかも声優、新しい時代のアーティストになれます」

正直、三嶋さんの先見の明の凄さには脱帽しました。本書を読んだ中の100人中95人くらいは、「三嶋さん凄い!」という感想が出てくるのではないでしょうか?

父との別れ

本書のタイトルでもある深愛は、TVアニメ「WHITE ALBUM」のオープニングテーマです。ちなみに、私はパソコン版の「WHITE ALBUM」をプレイしております(余談です)。

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「WHITE ALBUM」は、恋愛アドベンチャーゲームを原作としており、恋愛をテーマとしたアニメです。そのため、深愛もまた恋愛を主題とした歌なのですが、なんとこの曲には「亡き父への深い愛と感謝」が込められています。

長い間、闘病生活に耐えてきた父親ですが、水樹奈々さんは、とある日に「父親が危篤の知らせ」を受け取ります。急いで病院のある愛媛県の新居浜へと向かう水樹奈々さんですが、残念ながら最後の瞬間に立ち会うことはできませんでした。

「これは特別な曲です」

今もステージで歌うたび、私はそんな風に言う。大切な人との絆を描いた、本当にスペシャルな一曲だからだ。悩み抜いた末に決めたタイトルも、とても気に入っている。親への愛、大切な人への愛、親愛なる人に向けて深い愛情を注ぐという意味を込めた『親愛』

水樹奈々さんは、亡き父への愛を込めて、深愛を歌い上げました。

感想編

人生経験に無駄はない

水樹奈々さんは、演歌歌手を目指して幼少時代を歌に捧げ、演歌歌手を目指して上京します。結果的に、水樹奈々さんは演歌歌手ではなく、声優としてのデビューを果たすことになります。

それでは、演歌歌手を目指した幼少時代の経験は無駄だったのでしょうか?

もちろん、そんな事はありません。私は、本書を読み終えた後に「例え目指した目標に失敗したとしても、その脇で活躍できるフィールドがあるのではないか?」と感じました。これは、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」に登場する、ピアニストを目指したピアノ調律師にも通じるところがあります。

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演歌歌手も声優も、声を武器にした職業であることに違いはないのです。

チャレンジの先に出会いがある

近藤奈々さんが東京へ上京するきっかけとなったのは、地元の四国でイベントにたくさん参加したことにより、芸能事務所から目にとまったことが理由でした。三嶋プロデューサーとの出会いも、ファーストライブがきっかけです。

このように、水樹奈々さんの出会いは、イベントやライブによって生まれています。ここで重要なのは「自分から外に出てチャレンジすること」です。

ライブでも、イベントでも、選手権でも、カンファレンスや勉強会の登壇でも、とにかく前に出てチャレンジする。チャレンジをすれば、それを認めてくれる人が出てくる可能性があります。

ひとつひとつの出会いを大切にする

水樹奈々さんが凄いところは、出会いをとても大切にしていることです。『深愛』は間違いなく名曲ですが、父への愛と感謝の気持ちなくして、『深愛』という曲が生まれることはなかったと思います。

ひとつひとつの出会いを大切にしているからこそ、三嶋プロデューサーのような凄い人や、NHKの石原さんとも出会い、結果的に夢の紅白へとつながったのではないでしょうか?

さいごに

「七十七歳まで歌い続けたい!」三嶋さんとの対談でそう語った水樹さんは、これからも活躍を続けます。

演歌は豊富な人生経験を持っていたほうが、より感情を込めて歌うことができます。もしかしたら七十七歳の水樹奈々さんは、演歌を歌っているかもしれません。

その時のライブには、ぜひ私も参加したいと思います。あと40年かぁ。まだまだ長いので、頑張って生きねば(笑)。

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)

深愛 (しんあい) (幻冬舎文庫)