ポツダム宣言を受諾せず東西分裂した日本を舞台に、西へ東へ大奔走のSF活劇 屋上のテロリスト【感想】

知念実希人さんの「屋上のテロリスト」を読みました!

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太平洋戦争(第二次世界大戦)でポツダム宣言を受諾せず、ソ連の侵攻を受けた結果、東西ドイツのように分裂してしまった日本を舞台にした、SFエンターテイメント作品です。

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

ネタバレありの感想ですのでご注意ください。

目次

本作の見どころ

沙希に振り回される主人公

物語は、屋上での主人公(酒井彰人)の自殺未遂からスタートします。自殺寸前のところで、ヒロインである「佐々木沙希」に止められる主人公ですが、彼女に協力する代わりに「美少女に殺される」権利を獲得します。

本作の何が面白いって、人生に後ろ向きな主人公が、ひたすら沙希に振り回される過程が面白いのです。なにせ、のっけから現金輸送車の強盗をやってのけるのです。

彰人だって、強盗という不名誉な汚名を被ったまま死んでいくのは本望ではありません。そうやって、彰人はずるずると生かされていくのです。

東西に分裂した日本の駆け引きが面白い

本作の第二の見どころは、東西に分裂してしまった日本の駆け引きです。東日本連邦皇国と西日本共和国、それぞれの書記長と大統領が、ギリギリの駆け引きを展開します。

特に東日本では、書記長と陸軍のパイプが途切れてしまい、まさに軍部が主導で国が制圧されようとしています。そして、彼ら書記長や大統領もまた、沙希の手のひらに転がされているのです。

どんでん返しのミステリー

さすがに「あなたは100回騙される」は言い過ぎだと思うけど、素直に読んでいくと見事に騙されます。

見方によってはかなり「ぶっ飛んだ」展開だと言えなくもないですが、そもそもポツダム宣言を受諾しなかった日本を描いたSF物語ですので、もはや何でもありです。沙希は、四葉グループの頭取という立場をうまく活用していると思いますよ!

本作の面白いところ

ポツダム宣言を受諾しなかったという舞台設定

日本の降伏とポツダム宣言の受諾を巡っては、舞台裏でかなりのドラマがありました。「日本のいちばん長い日」という小説を読むとよく分かるのですが、降伏には反対で、一億玉砕という意見を持つ若い将校も多かったのです。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

本作は、降伏反対派によるクーデターが成功し、ポツダム宣言を受諾しなかった日本が舞台です。そのため、日本はソ連の侵攻を受けています。北から侵攻を受けた日本は、結果的に東西ドイツのように分裂されてしまいました。

もちろん、東西ドイツと同じく、西と東を隔てる壁も存在します。

かなり独特な設定なのですが、いちど世界観に入り込んでしまうと、先が気になって仕方がありません。何せ、本書の最初から最後まで、ほぼ一触即発の緊張状態なのです。特に、東日本の久保元帥は一番の危険要素ですが、沙希は久保元帥とも接触をしています。

なるか!?東西統一

東日本の芳賀書記長も西日本の二階堂大統領も、平和主義で日本の統一を望んでいます。しかし、軍部の力が強まってしまった東日本では、書記長の力で軍隊を抑えることができません。

普通に考えれば、軍部の力が強まるほど、和平への道は遠ざかります。万事休すと思われたわけですが、そこに現れるのが沙希なのです。本書を読んだ方であればあえて語るまでもないですが、後半の沙希はカッコよすぎるよ!

「私は東西日本の統一を要求します」

「ドイツはどうでしたか?あの国は一夜にして一つになりました」

書記長と大統領を一箇所に集め、全てが計算づくのテロを武器にした、強硬策の日本統一劇です。間違いなく沙希の頭が良いことは間違いないでしょうが、これだけの人を騙しながらテロを成功させたのですから、もはや何も言うことはありません。

生きる理由を手に入れた主人公

主人公である彰人は、沙紀に殺してもらうために惜しまず協力をしてきました。そんな主人公ですが、最終的には大きく心境が変化します。

命がけの東西統一を沙希と共にやり遂げた主人公には、確実に何かが芽生えていました。

僕は君に殺されたかったんじゃない。

僕は・・・・・・、ただ君に会いたかった。

ようやく気がついた自分の想い、ここではあえて語りませんが、沙希という太陽が彰人に光を与えたのです。

さいごに

本作は、まさにエンターテイメントと呼ぶに相応しい、ドタバタSFエンターテイメントの力作でした。東日本連邦皇国と西日本共和国を股にかけ、西へ東への大奔走です。

  • 太平洋戦争(第二次世界大戦)でポツダム宣言を受諾しなかったという、もしもの設定で読者の興味を引き
  • 死にたがりの主人公が、なぜか突然現れた美少女と現金輸送車の強盗
  • さらに、核のやり取りをする現場にまで遭遇してしまう

凄く感動するような作品ではないのですが、エピソードが豊富で、読んでいて飽きない作品です。「優しい死神の飼い方」といい、知念実希人さんの描くSFの凄さを痛感する一冊でした。

あなたも騙されてみてはいかがでしょうか?

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)