生け花の先生とのもどかしい年の差恋愛を描く 年下のセンセイ【感想】

「年下のセンセイ」という、中村航さんの描く恋愛小説を読みました。

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普段はそこまで恋愛小説を読むわけではないのですが、本屋で見かけた時に、直感的に気になってしまったのです。気づいた時には、もうレジにいました。

年下のセンセイ (幻冬舎文庫)

年下のセンセイ (幻冬舎文庫)

一気読みしてしまったのですが、とても綺麗に描かれている作品で、文章がとても丁寧です。透き通った水のように、すらすらと読めてしまう魅力があります。

ネタバレありの感想を書いていきます。

物語解説編

28歳の予備校に勤めるみのり

予備校に勤めるみのりは、現在28歳です。週末の生け花教室が楽しみで、自分が生けた花を誰よりも一生懸命、ファインダーにおさめています。

みのりはどこかいつも自信なさげであり、「予備校で正社員として編集長をやりませんか?」という誘いも、乗り気ではありませんでした。恋愛も奥手で、自分の本当の気持ちを隠しながら、うまく自分が傷つかないように振る舞っています。

そんな彼女の肩を押してくれたのは、親友の果歩でした。果歩は積極的な性格で、みのりとは正反対です。みのりは、果歩のアドバイスを受けながら、少しずつ自分の恋愛を見つめ直していきます。

20歳の生け花教室の助手を勤める透

みのりからセンセイと呼ばれる20歳の透は、生け花教室で先生の助手をつとめています。また、バーでアルバイトをしながら、東京の大学へ通うための資金を貯めていました。

二人が接近するきっかけは、もちろん共通の接点である生け花教室です。透は、みのりの生ける花に魅力を感じていました。他の生徒の誰よりも、みのりは花と向き合っていたのです。

バーで出会う二人

みのりと果歩は、結婚式の二次会の帰りに立ち寄ったバーで、透と出会います。そこは、透のアルバイト先だったのです。

透が東京の大学へ通うことを知った二人は、バーで送別会を開くことを決意します。送別会には果歩は参加できず、みのりと透の二人でひっそりと行われました。

明らかに惹かれ合う二人ですが、透が東京へ行く前に、恋が実ることはありませんでした。勇気を振り絞った透のアプローチを、みのりが受け入れることはなかったのです。

帰省からの再会

東京と愛知で、離れ離れになった二人、お互いに相手のことを忘れようとしますが、なかなか忘れることができません。

大学も、仕事も、花も、どことなく浮ついた空であり、ぎこちない日々を送っています。そんな二人が再会を果たすのは、透の帰省がきっかけでした。

紆余曲折ありつつも、無事に再会を果たした二人。そこからはもうラブラブです。「おやすみなさい、センセ。」ですよ!

感想編

年の差なんて靴のサイズの違いと同じ

みのりが恋愛に踏み出せなかったのは「20歳の青年に対して、こんな私で良いのか?」と、どこか引け目を感じてしまっている事が原因でした。

それに対する果歩の考えは明快です。「年の差って、靴のサイズと何が違うの?」ここまで返答が爽快だと、迷っているのがもったいなく感じてきます。

果歩:「みのりがおばさんになって、センセイがやっぱり若い子がいいって言いだしたとしたってさ、それはそれでいいじゃない」
みのり:「いや、それはよくない!」
果歩:「そうだ!それはよくないぞ、センセイ!」

このクダリがあまりに好きすぎて、読んでいて思わず笑ってしまいました。

果歩と飲みたい

本書の果歩は、爽快な発言を連発します。

  • 「普段は守っていても、いざってときはカウンターを仕掛けなきゃ。サッカーでも恋でも」
  • 「失うことを怖れているせいで、みのりはかえって、大切なものを失い続けているんじゃないの?」

あれこれ考え込んで守りに入るよりも、自分の気持ちに素直になろう。果歩はとても大切なことを、みのりと読者に教えてくれました。

「果歩と飲みたい!(心の叫び)」

私も考え込んで塞ぎ込みやすいタイプです。だから気持ちはよく分かります。爽快なくらいに考えを一蹴してくれる果歩は、みのりにとってこれからも、かけがえのない存在であり続けることでしょう。

待ち合わせ場所で花を生ける透が素敵

透とみのりが、無事に待ち合わせ場所の公園で再会を果たすことができるのか?・・・読んでいてとてもドキドキしました。

透は、どうしてそんなことをしているのか、自分でも理解できないと表現していますが、透は居ても立ってもいられない気持ちを、「生ける花」で表現していたのだと思います。

だからこそ、公園の噴水の前で生けた花には愛がこもっていて、それを見たみのりは「きれい」と表現したのでしょう。とても素敵じゃないですか!

生け花に想いを込めて、待ち人を待つ青年の透、最後まで迷った結果、再会を決意するみのり。こんな素敵な恋愛があったらしたいです。

さいごに

こんなことを言ってしまったら著者に怒られてしまうかもしれませんが、本書の主人公であるみのりは繊細な性格なので、例えば果歩みたいな性格の方が本書を読んでも、あまり共感できないと思います。

そういう意味で、本書はとても読む人を選ぶ本なのですが、私も似たような性格だったので、本書はとても共感できる一冊でした。

華道・生け花をテーマにした、中村航さんが描く素敵な恋愛小説の世界に、ぜひ足を踏み入れてみませんか?