千葉の南房総で田舎暮らしのスローライフ 海が見える家【感想】

はらだみずきさんの海が見える家を読みました。本書は2015年に刊行された「波に乗る」の文庫版です。

海が見える家 (小学館文庫)

海が見える家 (小学館文庫)

大学を卒業し、新社会人として勤めはじめた主人公は、3ヶ月を持たずして仕事をやめてしまいます。「決して値引きや返品に応じてはならない」商品のクレーム対応に配属され、もし応じてしまったら給料から減額されるという、厳しい職場でした。

本書は、ブラック企業で挫折した主人公がたどり着いた先の、南房総での物語を描いた物語です。

ネタバレありの感想ですのでご注意ください。

主人公の文哉のもとに届いた父親の訃報

本書は、亡くなってしまった主人公の父の生活を探求する物語です。主人公である文哉は、仲違いをしてから全く父と会っていなかったため、父親がどのような生活を過ごしていたのかを知りません。

亡くなってしまった父親の遺産を整理するために、文哉は南房総の家を整理します。その過程で見つかる父の遺品や、南房総の人との交流が本書の主なテーマです。

別荘の管理人という仕事

亡き父の仕事は、別荘の管理人でした。本書では、別荘の住人と現地住民との摩擦が問題提起として挙げられています。別荘の管理が行き届かないことによる風化や劣化、別荘の住人はゴミ出しの日を守らない、そういった摩擦を減らすために立ち上がったのが父の芳雄です。

主人公は、亡き父の別荘の管理を引き継ぐ過程で、南房総の人たちの温かさを実感します。特に見どころは、芳雄さんを偲ぶ会です。ずっと冴えないと思っていた父の芳雄のもとに、こんなにもたくさんの人達が集まったのです。

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趣味と交流のスローライフ

父親の遺品から、主人公は父親の趣味だったサーフボードや釣り道具を発見します。お金がない主人公は、夕飯のおかずのために釣りを始めました。また、「ぶっきらぼう」に教えられ、磯辺の食べられる食材探しやサーフィンにも邁進します。最初は生きるために始めた海との生活ですが、その過程で描かれる交流が魅力的です。

会社をすぐ辞めてしまった事に後ろめたさを感じ続ける主人公ですが、少しずつその傷が癒やされていきます。田舎暮らしは、都会の喧騒をかき消してくれました。

都会の喧騒を離れたい

私も、都会の喧騒を離れた暮らしには憧れています。仕事では、締切、納期、開発に追われ、常に生産性や効率化を求められる日々です。何故こんなにも、生き急ぐことを求められるのでしょうか?

私が思うに、都会を離れるという選択は、バランスを取るためにあるのではないかと感じています。

チャットワークの重村さん

チャットワークで働く重村さんは、山口県で働いています。仕事ではバリバリと開発をしながら、少し離れると、犬や猫と暮らす日々です。もちろん、都会でも犬や猫を飼うことはできますが、何より犬や猫がのびのびと暮らしているのが楽しそうです。

山口県で働くエンジニアのリモートワーク・エンジニアリング | チャットワーククリエーターズブログ

都会を離れることの何よりの魅力は、やはりこの伸び伸びとした暮らしにあるのではないでしょうか?

丹波で子育て

京都府の丹波地域は、自然が豊かでありながら、京都市内へ電車で20分~40分ほどで行けるような距離にあります。

cocolococo.jp

豊かな川、渓流が、子供をすくすくと育てます。また、京都へ電車で行けるような距離にありますから、仕事をするにも便利な場所です。

私が思うに、大自然は人間を豊かに育てくれるのではないかと思います。頭が良かったり、優秀なビジネスマンになることだけが人生じゃないんですよ!

さいごに

海が見える家は、働くことに疲れた主人公が、田舎暮らしで少しずつ元気を取り戻していく物語です。主人公ばかりがクローズアップされがちですが、主人公の父である芳雄もまた、同じく吸い寄せられるように房総暮らしを始めました。

息子から言われた「自分の人生を生きてない」の一言をきっかけに、昔の記憶を頼りに房総に戻ってきた芳雄もまた、仕事に疲れてしまったのでしょう。

凄く面白いというよりは、淡々と暮らしを描く本作ですが、今の現代人にこそ求められている話ではないかなぁと言うのが、本書を読んだ感想です。

はらだみずきさんが描く、房総の海と自然と交流、今一度、大自然を見つめ直してみてはいかがでしょうか?