ノーベル文学賞作家が描く情緒的なラブストーリー 林檎の樹

「林檎の樹」を読みました。

林檎の樹 (新潮文庫)

林檎の樹 (新潮文庫)

ノーベル文学賞を受賞した作家であるゴールズワージーの著書で、情景の描き方がとても情緒的な作品です。

感想を書きますが、ネタバレがありますのでご注意ください。

恋愛を情緒的に描く

ミーガンとの出会い 〜恋の落ち方を描く〜

本書の主人公であるアシャーストは、徒歩で旅行をしている途中に、足を痛めてしまいます。そこで、一時的に泊めてもらうための家を探した結果、とある家に泊めてもらうことになりました。

そこは自然が豊かな場所で、小川が流れているような、とても神秘的な場所です。

さて、そんな場所で主人公であるアシャーストは、ミーガンという若い女性に出会います。最初は騎士道精神を貫いていたアシャーストですが、ミーガンに惹かれている自分に気づきます。

そして、内から湧き出る感情には勝てず、ミーガンと林檎の樹の下で、愛を誓います。

・・・と、ここまでで良ければ幸せな物語なんですが、そうは問屋が卸さないのが本作です。

ステラとの出会い 〜恋の葛藤を描く〜

ロンドンへ戻って、一緒にミーガンと暮らすことを決意したアシャーストですが、準備のために立ち寄ったトーキーで、ラグビー校で一緒だった旧友のハリデーと出会います。

立ち寄ったハリデーの家で出会ったのが、実際に結婚することになるステラです。ハリデーの家では、アシャーストの葛藤が描かれます。

「僕は彼女(ミーガン)を愛してる。しかし、ほんとうに・・・愛しているのだろうか?」

読んでる側からすると、とてももどかしい気分です。アシャーストは、ミーガンに恋したことを「彼女の綺麗さに惹かれて、ただ自分のものにしようとしているだけなのではないだろうか?」・・・と感じ始めます。

ここまで不安を感じてしまったら、もうミーガンに合わせる顔がありません。その結果、ミーガンと再会することを諦めた主人公であるアシャーストは、結果的にハリデーの家にいたステラと、結婚することになります。

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丁寧な描写が魅力的な悲哀の物語

本書を通してみると、その魅力はやはり情景描写にあります。人も、自然も、街も、とても丁寧に、綺麗に魅力に執筆されているのが本作です。

ただ、作品を通してみると、どこか悲しい雰囲気がつきまといます。僕からしてみたら、「綺麗な女性に惹かれて両思いになったのだから、その愛を貫き通せば良いじゃないか!」と言いたくて仕方がありません。

しかし、本書のアシャーストは「ミーガンとの恋愛は、一時の感情に流されてしまった結果であり、彼女に申し訳がない」と感じていたのです。

結果的に、アシャーストを待ち続けて恍惚状態に陥ってしまったミーガンは、わずか40センチの深さの小川で命を落としてしまいます。

さいごに

本書の感想としては「身勝手なアシャーストに翻弄されたミーガンが可哀想」の一点につきます。

あとがきの解説に「もしアシャーストがミーガンと結びついたとしても、果してそこに幸福が訪れることになっただろうか?都会の青年と田舎の少女の結婚生活は、やがて現実の中でさまざまな障害にぶつかるであろう・・・」とあります。

・・・でも「そんなの関係ねぇ!」わけですよ。ミーガンが都会が苦手なのであれば、郊外や田舎に住むという選択肢もあったかもしれないし、何より、林檎の樹の下で誓った愛を、こんなにも簡単に放棄してしまうなんて!

情緒的な描写が取り上げられがちな本作ですが、その本質は悲哀の物語です。人間というのは、どうしてもこうも身勝手になってしまうのですかねぇ。

林檎の樹 (新潮文庫)

林檎の樹 (新潮文庫)