【感想】黒猫の小夜曲(セレナーデ) 未練を残した魂の物語

黒猫の小夜曲(セレナーデ) を読みました。電車の中で読みながら、黒猫と麻矢のやりとりに癒やされつつ。

黒猫の小夜曲 (光文社文庫)

黒猫の小夜曲 (光文社文庫)

ちなみに、前作の主人公である犬のレオが何回か登場しますので、前作を読むことは必須です。

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

さて、そんな黒猫の小夜曲ですが、物語の流れは前作と同じです。我が主様の元へと行けない、未練の残った魂を導くための物語です。

「何を言ってるかよく分からないし、我が主とは何か?」と、感じる方も多いと思いますが、その場合はぜひとも「優しい死神の飼い方」を読んで欲しいです。かなりの名作で、私は感動が押さえきれませんでした。

・・・というわけで、ここからはネタバレ感想になります。

魂を導くための物語

本作では、死んだ人間の魂は「道案内」に導かれ、我が主様の元へ行くという設定になっています。しかしながら、現世に未練のある魂は、それを受け入れようとしません。

彼らは何らかの未練を持っている魂ですので、一筋縄には行きません。そこで、彼らの未練を解消し、我が主様の元へ行くお手伝いをするために現世に召喚されたのが、前作の主人公である犬のレオであり、本作の主人公である黒猫のクロであるというわけです。

f:id:konosumi:20180512161052j:plain

第一章 桜の季節の遺言状

第一章は、とにかく夫に先立たれてしまった、老年の妻である菊子が気の毒でした。何せ、夫の遺言状に「四十年 わがまま 耐え ついて 本当に 恨んだ して」と書いてあるのです。

恨んだの一言にショックを受けた妻の菊子は、ただただ暗い日々を過ごします。仏壇の前でぼーっとし、仏壇の前で寝て、ただただ夫に贖罪する日々です。

第一章では、黒猫の推理が見事でした。菊子の夢の中に入り込み、夫は妻を恨んでいたわけではなく、本当は出会って四十年の日にサプライズプレゼントを企画していた事を、推理によって解き明かします。

まさか「ひったくり、痴漢に注意」のカンバンをヒントにして、そこまで推理が進むとは思ってなかったです。自分に推理の才能が欲しい。

第二章 ドッペルゲンガーの研究室

第二章は、とにかく不思議な章でした。刑事さんの魂は、無事に我が主様の元へ導かれたものの、謎はさっぱり解決していません。

ただ、第二章の先崎もまた、気の毒です。事件の真相を解き明かそうとしたのに、自殺であると断定され交通課への移動、さらにはガンによる余命の発覚が彼に追い打ちを駆けます。

・・・しかし、私は先崎に刑事魂を見ました。何せ、彼はガンによって余命が定められた身体であるというのに、その残りの貴重な人生を、事件の真相追求に費やすというのです。

事件の真相を暴くことができなかったという、先崎の最終的な未練は、黒猫のクロへと引き継がれます。しかし、クロもまた、ここで葛藤することになります。既に我が主様の元に導かれた魂のことなんて、本来は気にする必要はないのです。

第三章 呪いのタトゥー

第三章は、恋人同士の物語です。阿久津の恋人である和美は、アフリカに行った阿久津の帰りを待ちわびていました。しかし、アフリカから帰ってきた阿久津は、まるで別人のように人が変わってしまいます。

何かに怯えるような日々を過ごし、和美のことを求めようともしません。挙句の果てには、一緒に住もうというプロポーズの言葉を、思い上がるなと否定され、彼に捨てられてしまいます。

本作では、未練が起きそうな人間からは腐臭がするという表現を使っていますが、第三章はこの腐臭を解消する物語です。

さて、本章の謎は、他の章と比べて比較的解きやすかったのではないでしょうか?呪いなど存在しないと科学的に考えれば、彼の職業も鑑みてある程度推理する事ができます。さすがに、病名まで言い当てることは出来ませんでしたけど。

私は、先日読んだ「最後の医者は雨上がりの空に君を願う」を通して、HIV(エイズ)は治療できる病気であることを知っていました。しかし、アレルギー体質である阿久津は、なんと普通のエイズの治療薬を飲むことができなかったのです。

www.konosumi.net

阿久津に嫌われたわけではなく、和美の幸せを願って自ら消えていった阿久津の気持ちを知った和美は、無事に我が主様の元へと導かれていきます。

ただ、私個人の感想としては、やはり最愛の恋人には病気は素直に打ち明けるべきだと思うのです。もし、クロが真相を解きやすことがなかったら、和美は未練を残したまま死んでいったことでしょう。本章では良い話として終わっているけれど、私には納得が行きません。

全然関係ない話ですが、阿久津と聞くと、私はどうしてもテニスの王子様の「阿久津仁」とパワプロの「阿久津」が思い浮かびます。余談です、ええ。

第四章 魂のペルソナ

第四章が凄いのは、全ての章の事件がここでリンクすることです。この話の組み立てには、読者としても唸りました。

二転三転する事件の犯人説、はたまた「白木麻矢」に乗り移った魂こそが真犯人であるという説まで飛び出します。

第四章は事件の真相に迫っていく章ですので、眠気が吹っ飛び駆け抜けるように読み終えてしまいました。

マタタビをクロに使っていたという事実が判明した時は「もしかして!」と思ったりもしましたが、彼女が犯人じゃなくて良かったです。しかしながら、これだけの事件を引き起こした犯行の動機が、研究の手柄であり、研究者のしてのプライドにあったとはねぇ。世の中は本当に傲慢ですよ。

話は変わりますが、本章では前作の主人公である犬のレオが大活躍します。レオはやっぱりいいやつです。

さいごに

未練には暗い過去が詰まっていて、それを解決するのがクロの仕事内容になります。そのため、終始どこか暗さの漂う話ではあるのですが、クロの推理力と行動力が、見事に謎を解決します。

結末としては大団円ですが、やはり教授の傲慢さには不満が残ります。

・・・でも、エピローグで道案内に戻ることを拒否したクロが、最後に長い眠りから目覚めた麻矢と触れ合うシーンを見て、全てを許せるような気になってきました。

人間は時に傲慢であり、時に思いやりのある人物です。クロもまた、人間と触れ合うことで、合理性だけでは判断できない、人情であり感情を知ることができました。現世にとどまったクロは、これからも未練を解消していくことでしょう。

レオとクロの物語に、これからも目が離せなくなりましたね!

黒猫の小夜曲 (光文社文庫)

黒猫の小夜曲 (光文社文庫)

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)