【感想】最後の医者は雨上がりの空に君を願うは、生と死を巡る考えさせられる物語【ネタバレ】

最後の医者は雨上がりの空に君を願うを読みました。

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫)

ちなみに、本作は上下巻に分かれていますが、文字が大きめのトータルで約500ページですので、そこまで読むのに時間がかかるわけではありません。

なお、本作は「最後の医者は桜を見上げて君を想う」の続編です。主人公である福原と桐子のことを詳しく知るためには、どうしても前作が必読になります。そのため、先に前作を読むことを推奨します。

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

ネタバレありの感想を書いていきますので、予めご了承ください。

生と死を問う医療ドラマ再び

前作である「最後の医者は桜を見上げて君を想う」は、「生きるとは何か」を問いかける物語でした。「生き続けることを善」とする福原と、「死を肯定」とする桐子。この二人の対象的な考え方を通して、読者に深く考えさせるようなお話でした。

本作も同じく、死を通じて生を考える作品であることは、変わりません。

第一章:とあるチャラ男の死

とあるチャラ男の死では、対象的な二人の結末が印象的です。

  • 医者から説明を受け、HIV・エイズの正しい知識を理解し、美穂。
  • 周囲からHIV・エイズの怖さを吹き込まれ、診察への一歩を踏み出せず、亡くなってしまう駿太

確かに現在では、エイズは完治こそ難しいものの、しっかりと薬を飲み続けて入れば通常と同じくらいに長生きできると言われています。

現在、HIVを体内から完全に排除できる治療法はありませんが、抗HIV薬によってウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を防ぐことで、長期間にわたり健常時と変わらない日常生活を送ることができ、HIVを持っていない人と変わらないくらいの寿命が期待できます。
引用:https://www.hivkensa.com/mb/whatis/

第一章を読んだ限りでは、やはり患者の意志を過度に尊重してしまうことは、間違いであるように思えます。正しい医療知識を持った人間が、適切なアドバイスや指導を実施することは、重要なのです。

第二章:とある母親の死

とある母親の死は、上巻と下巻にまたがって書かれています。とあると言っても、本作の主人公である福原の母親の話なのですが。

第二章の主題は、病気を治すことを諦めるのか、それとも治ることを渇望するのかにあったように思います。

「あなたの中に希望がないなら、そばにいる誰かの中に、希望はこっそり隠れてる」
引用:最後の医者は雨上がりの空に君を願う

私はこの絵梨の言葉が、とても印象に残っています。

「自分の生は、自分のものだけではない」そう絵梨は訴えかけているのです。一度治ることを諦めた絵梨が、再び治ることを信じ始めたきっかけは、必死に治ることを願っている息子のカズという存在でした。

私は、第二章は第一章と対照的であると感じました。第一章では、患者の意志を素直に尊重した結果が描かれているのですが、一方の第二章では、患者の意志が周囲の存在によって途中で変化したのです。

本章は、福原の母親である絵梨と、当時まだ子供だった桐子を通じて描かれる、とても深い章でした。

第三章:とある医者の死

第三章では、すっかり福原が悪者のようになってしまいました(苦笑)。「父親が死ねば院長の座は俺のものだ」って、悪役のセリフそのまんまじゃないですか!

とある医者と言うのは福原の父親であり、第二章で描かれた絵梨の旦那さんだったわけですが、本章では桐子が大活躍をします。

もちろん、桐子が暇だったからと言うのもありますが、とにかく桐子は患者と向き合います。ほぼ全ての言動をメモして、患者は何を考えているのかを読み取ろうとしているのです。

「桐子。お前の言っていた救える人というのは」「君のことだよ。福原」
引用:最後の医者は雨上がりの空に君を願う

何気ないセリフのように思われますが、この桐子のセリフには衝撃を受けました。院長である欣一郎のことばかりに気を取られていたのですが、救える人は福原本人だと桐子は言うのです。

「患者とその家族に向かい合うのが、主治医の仕事である」そう桐子は続けます。残された人間を、幸せにできる人間を幸せにするという考え方には驚きました。

そして、第三章で鍵となる神宮寺は、大活躍をしました。何せ、バーで飲み続けて福原の家に泊まってしまうほど、福原の話を聞き、彼の心を引き出してしまうのです。

ラストには賛否両論があるかもしれませんが、福原が本気で父親である欣一郎と向き合うことが出来たため、私はとても満足しています。

さいごに

こんなことを言うと怒られてしまうかもしれませんが、本作は第一作目の「最後の医者は桜を見上げて君を想う」ほど、メッセージ性の強い作品ではありません。しかしながら、本作は患者の生と死そのものではなく「家族などの周りを含めた(巻き込んだ)生と死との向かい合い方」を描いているように思えます。

家族が病気は治ると信じていれば、患者本人にも闘う意志が生まれてきます。私はそこに希望を見ました。

「親友、家族、恋人をはじめ、身近な人間の生死と、我々はどう向き合っていけば良いのか?」

私は、そのような問題提起が本作を通じて投げかけられていると解釈しました。本作が問いかける問題に、あなたならどう答えますか?

おまけ

本作の帯いわく、映画化企画が進行中だそうです。公開日が決定したら、私も映画館に足を運んで観に行くことにしました。

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫)

最後の医者は雨上がりの空に君を願う(下) (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)

最後の医者は桜を見上げて君を想う (TO文庫)